『 妖ノ祭 』 第20話 赤い月、眠らぬ夜

AI が紡ぐオリジナルストーリー『妖ノ祭(あやかしのまつり)』

20話 赤い月、眠らぬ夜

 妖ノ祭、五日目の深夜。

 月が低く、血のように赤い光を放っていた。

 風は止み、虫の音も消えた。

 森の中にただ一人、男が立っていた。

 黒野レイジ

 その周囲の空気は、まるで燃え残った灰のように熱を帯びている。

 彼の呼吸は浅く、目は虚ろだった。

〈レイジ・視点〉

……あの剣士の一太刀……まだ、腕が疼く

 志岐真の冷たい眼差し。

 あの静けさ。

 それを思い出すだけで、胸の奥が焼ける。

チクショウ……

 握った拳から、妖力が漏れる。

 地面に黒い焦げ跡が広がる。

落ち着け、レイジ

……落ち着けるわけねぇだろ

 白丸の声が、静かに、諭すように響いた。

〈白丸・視点〉

怒りは剣を鈍らせる。お前自身が分かっているはずだ

分かってるよ。だけど……止まらねぇんだよ!

 白丸は何も返さない。

 レイジの声の奥に、悲鳴のような震えを感じ取った。

この男は……怒っている相手が誰か、まだ分かっていない

 剣士としての誇りを折られた怒り。

 自分を見下す他者への憎しみ。

 そして——一番奥にあるのは、“自分への苛立ち”。

 そのすべてが混ざり、燃えている。

 レイジの周囲に、紅の火花が散る。

 それは炎ではなく、妖力の“歪み”。

 夜の森が、その熱を受けて軋んだ。

 木の葉が揺れる。

 小さな動物たちが逃げ出す。

 彼の怒りが、森の生態を壊し始めていた。

〈白丸・視点〉

……聞け、レイジ。怒りを燃やすな。研げ。

研ぐ?

そうだ。剣は火ではなく刃だ。お前の炎は、まだ形を持っていない。形を作らねば、ただの“爆ぜる熱”だ。

 レイジは黙っていた。

 月明かりに照らされた双剣が、かすかに脈打つ。

お前が怒る理由を、俺に教えろ。

 レイジは小さく息を吐いた。

 それは、喉の奥でこもるような苦笑だった。

……ムカつくんだよ

何がだ

全部だ。弦も、真も、俺の前を歩いていく奴ら全部。どんなに鍛えても、全然届かないあいつからが……

 拳を握る音が聞こえる。

……それでも、俺は“最強”でいたい

 夜空の赤が濃くなる。

 レイジの背中から立ち上る妖気が、まるで翼のように広がった。

 それは“炎”ではなく、“闘志そのもの”。

 白丸が低く唸る。

……この感情、制御できるか?

できるさ。……今度こそ、な

 レイジは笑う。

 その笑みは、痛みを隠す仮面のようだった。

 その時、森の奥で枝が折れる音がした。

 気配——。

 瞬時に双剣が抜かれた。

 赤黒い残光が、木々の影を照らす。

 だがそこにいたのは、怯えた別ペアの人間。

ひっ……ま、待てっ!俺は戦うつもりは——!

 言葉が終わる前に、レイジの剣が地を裂いた。

 相手は恐怖で逃げ出す。

 レイジは追わない。

 ただ、剣を見つめて呟いた。

……逃げんじゃねぇよ

〈白丸・視点〉

……もう、境界が曖昧になってきている

 白丸はレイジの心の中で感じていた。

 “剣士”と“怪物”の境目が、薄れていく。

 怒りに燃えるその妖気は、

 いずれ本能に支配される。

 しかし、同時に——

 あの志岐真ですら立ち止まるほどの、“潜在力”を孕んでいた。

この男の炎は、いずれ誰かを焼き尽くす

 月が赤く光を増す。

 森全体が息を潜めた。

 そして、その中でただ一人、

 レイジの瞳だけが燃えている。

俺は、負けねぇ。誰にも、もう絶対に。

 その声が、夜を貫いた。

 燃えぬ炎が、確かに灯った。

次回森を歩く影

 

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