『 妖ノ祭 』 第18話 燃えぬ炎

AI が紡ぐオリジナルストーリー 『 妖ノ祭(あやかしのまつり) 』

18話 燃えぬ炎

 妖ノ祭、五日目の昼。

 森の中央部——開けた広場のような場所。

 昼下がりの光の中で、二人の剣士が相対していた。

 ひとりは、静の象徴。

 志岐真

 無駄な動きも、無駄な言葉もない。

 もうひとりは、激情の塊。

 黒野レイジ

 その目に宿るのは、ただ“勝ちたい”という渇望。

 二人の間に、緊張が張り詰める。

〈志岐真・視点〉

……その構え。まだ粗い

 レイジが抜刀した瞬間、志岐の口から自然と出た言葉。

 決して挑発ではない。純粋な“評価”だった。

 レイジの握る双剣——片方には妖気が宿っている。

 それは、斬鬼・白丸。刀そのものが妖怪。

粗い、ね……

怒りで刃は振れるが、心が乗っていない

そんなもんで勝てると思ってんのかよ

 空気が弾ける。

 レイジが飛び出した。

 双剣が閃く。

 赤と黒の残光が空を裂き、地を割る。

 だが、志岐は微動だにしない。

 彼の剣が動くのは、ほんの一瞬——。

 “受け”と“斬り”が同時に成立する完璧な剣。

 レイジの二撃目が阻まれる。

 その衝撃が森に風を生んだ。

〈レイジ・視点〉

っ、速ぇ……っ!

 自分の剣が止められたことに、身体が驚いている。

 目で追えない。

 気づいた時には、志岐の刃が自分の喉元すれすれにあった。

その程度か

 志岐の声が静かに響く。

 その静けさが、余計に胸を焦がした。

ふざけんなよ……!

 レイジの足元から、妖力が爆発する。

 地面が砕け、炎が迸る。

〈斬鬼・白丸・視点〉

……落ち着け、レイジ。今のままでは斬れぬ

うるせぇ! てめぇは剣だろ、斬ることだけ考えろ!

……ならば、お前も斬ることだけを考えろ

 白丸の刃が赤く染まる。

 妖気が燃え上がり、レイジの身体を包み込んだ。

 双剣が重なり、炎の軌跡を描く。

 その一閃が、志岐真の周囲の地面をえぐり取った。

〈志岐真・視点〉

……ほう

 志岐の瞳が、わずかに細まる。

 斬撃の圧は確かに増している。

 しかし、その刃筋には“怒り”しかない。

力を上げるだけでは、剣は鈍る

 足元を滑らせるように踏み込み、

 志岐の剣がレイジの双剣の間を突き抜けた。

 レイジの頬に、細い傷が走る。

……ぐっ!

これが“剣”だ。刃の上に心を置け。お前のそれは、ただの“殴り”にすぎん

 志岐の言葉は静かだったが、

 レイジにはそれが“屈辱”そのものに聞こえた。

 幼い頃、尊敬していた弦に勝ち、

 自分こそが頂点だと思っていた。

 なのに、まだ届かない者がいる。

……弦にもまだ届いていないのでは。

 胸の奥で何かが軋む。

〈レイジ・視点〉

なんでだよ……!なんで、まだ届かねぇんだよ!

 双剣が交差する。

 力任せに振り抜く。

 しかし、志岐は受け流すだけで一歩も動かない。

お前……俺を、なめてんのか!!

 怒りの爆発と同時に、妖力が荒れ狂う。

 白丸の刃が共鳴し、赤黒い光を放つ。

これ以上は危険だ、レイジ!

黙れえええっ!!

 炎の衝撃が森を焼いた。

 視界が白く染まる。

 轟音と共に、木々が倒れ、煙が立ちこめる。

 しかし、その中から歩み出たのは——志岐真だった。

 外傷ひとつない。

 斬り払った余波で、炎の流れを逸らしていたのだ。

……見事な熱量だ

 その言葉が、かえってレイジの胸を抉った。

だが、その炎はまだ燃えていない

〈レイジ・視点〉

 呼吸が荒い。

 全身が痛む。

 戦える状態ではなかった。

 これ以上続ければ、完全に押し切られる。

白丸……行くぞ

撤退か?

……まだ、終わっちゃいねぇ

 煙の中、レイジは背を向けた。

 志岐真は追わない。

 その背を見送りながら、ただ静かに呟いた。

怒りは、刃を鈍らせる。だが……磨かれれば、真の“炎”になるかもしれんな

 森を駆け抜けるレイジの背に、

 焦げた風が纏わりつく。

 その瞳には、悔しさと怒り、

 そして、確かな執念が燃えていた。

次は、必ず斬る。弦も、真も、全部だ。

 妖ノ祭五日目。

 黒野レイジの“炎”は、まだ燃え始めてすらいなかった。

次回『紅い残響

 

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