『 妖ノ祭 』 第27話 灰の行進

AI が紡ぐオリジナルストーリー『妖ノ祭(あやかしのまつり)』

27話 灰の行進

 妖ノ祭・七日目の昼。

 空はいつもより薄く、陽の光はどこか遠く感じられた。

 深仙郷の森は、息を潜めている。

 木々の葉は揺れを忘れ、鳥も声を潜める。

 その静けさの奥で、何かがゆっくりと変わっていく。

〈弦・視点〉

 斜面を登ると、足元に小さな群れが見えた。

 そこに横たわるのは、いつも村の周辺で働く下級の妖たち——。

……動いてる?

微かに、だが意識は薄いわ

 クウナがゆっくりと近づく。

 倒れている妖たちの顔は穏やかで、まるで眠っているかのようだった。だがその手は力なく、胸の鼓動は遅く細い。

妖力が抜けてる……まるで、力が枯渇したみたい

誰かに“吸われた”ような感じがする

 弦は手を差し伸べると、そっと額に触れた。皮膚は冷たく、力が戻る気配はなかった。

 妖たちは消えてはいない。

 しかし、彼らの眼差しは遠く、動作は鈍く、笑みは生温かく歪んでいる。

 妖力の減退は、身体の力を奪う。

 食欲が失せ、声がかすれ、膝が立たなくなる。

 このまま妖力が抜け続けると存在の輪郭が薄れていく。

 村の下級妖たちが、次第に起き上がれなくなっていくさまは、見る者の胸を締めつける。

〈トコヨ・視点〉

 山の見張りから符を取り出すトコヨ

 妖気の流れを示す符が不規則に反応する。

何だこれは……一方向に流れてる。妖力が、どこかへ吸い寄せられている

 地図上の符は、深仙郷の中心——祠の地下を指し示していた。

〈楓・視点〉

 地下の祠。古い石の床に描かれた陣。

 御神楓は静かに膝を据えていた。中心には黒光りする結晶が浮かび、周囲には小さな導線のように符が並ぶ。

順調だな

そうね

 ヒメガミが囁く。

 楓は眼差しを落とす。

 結晶は、微かだが確かに光を増している。

これは“浄化”ではない。言うなれば、選別だ。余計な雑音を取り除けば、村はもっと静かに、もっと穏やかになる

 その口調は穏やかだが、心は冷えている。

〈ヒメガミ・視点〉

 ヒメガミは楓の手元を見つめる。

 覡としての矜持と、それを越える好奇心が混ざっている。

この術は“夢の抽出”に近いわね

 ヒメガミは小さく頷きながらも、内側で揺れていた。

 “夢”を扱うことの倫理。壊すことと守ること。彼女の心は、その境界に針を突きつけられていた。

 弦とクウナは倒れた妖たちを越え、静かに歩を進める。森の奥から流れてくる気配は、確かな「吸引の流れ」を示していた。

誰がこんなことを……」弦がつぶやく。

計画的だ。偶発的ではない」クウナが答える。

 二人は顔を合わせ、無言の決意を交わした。

 足元に散る灰のように見えたのは、実際には細かな妖力の残滓。だがその色合いは、生気の減少を告げている。

 村を歩く他の者たちも、同じ光景を目にしていた。

 ある者は介抱を試み、ある者は背を向けた。共通するのは、かつての活力が失われていることへの恐れだった。

 空気は冷え、時間がゆっくりと流れる。

 そして、祠の結晶はさらに青白い光を帯びる。

〈弦・視点〉

クウナさん、これって……直せるのか?

簡単ではないわ。妖力を外部から引き戻すには、強い還元力が必要

 クウナの言葉には、憂いが混じっていた。

誰がやってるのか突き止めれば、どうにかなったりする?

可能性はあるな。とにかく急ごう

 ふたりは手早く周囲の者たちに応急措置を施しつつ、祠の方向へ歩を早めた。

 祠の奥では、楓の術が静かに進行している。

 結晶の光は、確かに“吸引”のリズムを作り、周囲の妖力を引き寄せていた。だがその過程は妖たちを即死させるものではなく、徐々に力を奪い、心身を衰弱させるものだった。

 深仙郷は今、夢を奪われつつある——だが消滅ではなく、薄く、重く、永く続く衰弱の病が広がっている。

次回揺らぐ結界

 

前回『 妖ノ祭 』 第26話 静寂の夜明け

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