『 妖ノ祭 』 第34話 均衡の崩壊

AI が紡ぐオリジナルストーリー『妖ノ祭(あやかしのまつり)』

34話 均衡の崩壊

 世界が震えていた。

 空は裂け、昼と夜が交互に点滅する。

 夢と現実の境界が、完全に壊れつつある。

 深仙郷全体が、一つの巨大な“夢”と化していた。

〈弦・視点〉

クウナさん!

ああ、わかってる!

 二人は並んで立つ。

 崩れ落ちる夢の地平の向こうに、

 御神楓ヒメガミが待っていた。

 楓の黒装束が風に揺れる。

 その瞳は、すべてを見通す神のように静かだった。

——この村の争いを終わらせる。それが私の願い。妖ノ祭など、もういらない

〈弦・視点〉

なら、聞かせてください

なにを?

“終わらせたあと”は、どうするつもりなんだ

 楓の眉がわずかに動いた。

……平穏に、暮らすだけよ

それ、楓さん自身の夢じゃないでしょ

 弦は拳を握った。

人が夢を見て、転んで、立ち上がるのが“生きてる”ってことなんじゃないかな

〈ヒメガミ・視点〉

くだらない理想論!

 ヒメガミの手が振り上がる。

 六つの光輪が空に広がり、

 “封神陣・天秤環”が展開される。

秩序なき夢など、再び戦を呼ぶだけ!

 彼女が光輪を放つ。

 雷鳴のような轟音とともに、無数の光の鎖が走った。

〈クウナ・視点〉

甘いじゃないか、光の神子

 クウナの羽根が展開される。

 漆黒の雷が周囲を包み、

 ヒメガミの鎖を絡め取るように弾き返す。

妖の本質は混沌だよ。そして、秩序だけの世界なんてものを望んだ妖が、私に勝てる訳がない

 黒い羽根が刃と化し、

 光輪を一つ、二つと切り裂いていく。

“白夜ノ咆哮(びゃくやのほうこう)”!

 轟音。

 ヒメガミの結界が砕け散る。

っ——!

 光の中で、ヒメガミが膝をついた。

〈楓・視点〉

……ヒメガミ!

平気……!

 楓は手を前に出し、ヒメガミを守る結界を展開する。

 しかし、その腕が微かに震えていた。

……きみたちは、何もわかっていない。人は、夢を見るほど愚かになる。妖も、それに巻き込まれて滅びる。私は、それを——止めたいだけなんだ!

〈弦・視点〉

止めるんじゃなくて、変えるんだよ!

 弦が叫ぶ。

 赤いハチマキが光り、

 足元の地面に赤い紋章が走る。

“無能力者”だったからわかるんだ!力がない奴は、どんな小さくても夢があるから前に進めるんだ!

 クウナの妖力が弦の背に流れ込む。

 赤と黒の光が一体化し、彼の拳が燃え上がる。

これが俺たちの夢の形だ——!

 空が鳴る。

 弦の拳が楓の結界を貫いた。

 その衝撃で世界の光が揺らぎ、

 夢の層が音を立てて剥がれていく。

 幻想の花火が散り、

 笑っていた幻影たちが、静かに消えていく。

〈楓・視点〉

……どうして、そこまで夢に縋れるんだ

縋ってるつもりじゃないよ。バカみたいに信じてるんだ!いつか報われるって

 弦の拳が再び突き出される。

 だが、その直前——楓が瞼を閉じた。

……あぁ、そうか。“バカみたい”に信じられる力……それを、私は捨ててしまったのかもしれない

 光が弾ける。

〈ヒメガミ・視点〉

楓っ!!

 爆光。

 楓を包む結界が砕け、

 風が吹き抜ける。

 煙の中から、ゆっくりと立ち上がる楓の姿。

 衣は焦げ、髪が乱れている。

 けれど——その表情は、穏やかだった。

〈楓・視点〉

負けたんだな、私は

 楓の唇が、わずかに笑みに歪む。

 後悔はある。負けた事、術を砕かれた事、この歪なペアに興味を持ってしまった事。

 悔やんでも悔やみきれない程に。でも少しだけ救われた気もしている。

この気持ちは、なんだろうな

 空が光に包まれる。

 崩壊しかけた夢の世界が、静かに再構成されていく。

 それは完全な現実でも、完全な幻想でもない。

 ——“新しい夜明け”。

 ヒメガミが、楓を支えながら立ち上がる。

楓……

行こうか、ヒメガミ。今度は、誰かの夢を止めるためじゃなく……見届けるために。

 その言葉を最後に、楓とヒメガミの姿は消えた。

〈クウナ・視点〉

……消えた?

術式の主が力を解いたんだ。あの2人は、自分でこの世界を閉じた。きっと現実の方も元に戻っているだろう

そうなんだ……

 弦が空を見上げた。

 淡い光が流れ、朝日が昇り始めていた。

やっと……夜が明けたね

 クウナはその横顔を見つめて、小さく笑った。

まったく。ほんと、バカのくせに無茶するんだから

はは、それは俺の特技だから許してよ

 夢が消え、現実の深仙郷に朝が訪れる。

 静かな風が吹き抜け、

 遠くで鐘の音が響いた。

 妖ノ祭——九日目の夜。

 最強の妖怪と、元無能力の人間が、勝利を手にした。

理想は終わり、現実が始まる。——夢は、まだ続く。

次回夢の心臓

 

前回『 妖ノ祭 』 第33話 理想と現実

『 妖ノ祭 』第1話 封じられた夜、朱の光

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