『 妖ノ祭 』 第11話 焦燥の刃

AI が紡ぐオリジナルストーリー 『 妖ノ祭(あやかしのまつり) 』

11話 焦燥の刃

 妖ノ祭、三日目の朝。

 深仙郷の空は薄青く、霧が静かに漂っていた。

 夜の紅が消え、風が凪いでいる。

 だが、ある男の胸にはまだ、夜の残り火が燻っていた。

 黒野レイジ

 人間ランキング第5位、双剣の天才。

 ——その瞳の奥に、焦燥の色が宿っていた。

〈レイジ・視点〉

 朝の空気が痛い。

 眠れねぇ夜のあとに吸う空気は、いつも苦い。

 昨夜の戦いが、何度も脳裏をよぎる。

 弦の拳。

 あの笑い声。

 ……なんで、あんなに楽しそうに戦えるんだ。

 俺は勝ってたはずだ。

 実力も、速度も、妖力も、全部上だった。

 なのに、胸の奥がモヤモヤする。

 勝った気がしねぇ。

……俺は、何を証明したかったんだ?

 口に出した瞬間、喉が詰まった。

 白丸が、黙って俺の横に立っていた。

〈白丸・視点〉

 レイジの背中が、夜明けの光に照らされていた。

 その影は長く、疲れて見える。

レイジ

なんだ

お前の剣、昨日より鈍っている

は?

刃の輝きが曇っている。怒りでも恐怖でもない……“迷い”だ

……うるせぇ。少し休んでるだけだ

 そう言いながらも、レイジは自らの肩を見つめていた。

 そこには、弦の拳が当たった痣が残っている。

 ——“無能力者”の拳。

 それが、確かに自分の身体に届いていた。

 レイジの中で、何かがずれていた。

 「勝ち負け」では整理できない感情。

 弦が笑っていた理由。

 自分が怒っていた理由。

 そのどちらも、説明がつかない。

〈レイジ・視点〉

 昔、道場での稽古。

 俺は初めて弦に勝った。

 周囲は俺を褒めた。

 でも、あいつは何も悔しそうじゃなかった。

 「やっぱレイジ強いな〜! でも次は負けない!

 負けても笑ってる。

 努力しても勝てなくても、笑ってる。

 それが、どうしようもなくムカついた。

 今も、同じ顔してた。

 あの時と変わらねぇ。

 なのに——

 “悔しい”のは、俺の方だ。

〈白丸・視点〉

 レイジは夜明けを見つめていた。

 その瞳に映るのは光ではなく、影。

レイジ

……なんだよ、また説教か?

レイジは、弦という存在に怒っているのではない

……は?

怒っているのは、自分自身だ。努力しても報われなかった誰かを見たくない。そして——報われなくても笑っている誰かを許せない

 レイジは黙った。

 握った拳が小刻みに震えている。

……許せるわけねぇだろ

なぜだ

俺は、努力でここまで来た。なのに、あいつは努力しても届かねぇのに、笑ってる。そんなの、馬鹿にされてるみてぇじゃねぇか……!

 言葉の終わりに、かすかな怒気が混じった。

 焦燥。

 それは敗北の種子。

 怒りに変わる前の、不安定な熱。

 レイジの心は、ゆっくりと黒に染まり始めていた。

 そして同じ朝、別の場所では——

 紅の風が、やさしく吹いていた。

〈弦・視点〉

クウナさん、昨日のレイジ……なんか、元気なかったよね

元気の問題ではない。彼は、自分を見失っている

見失っている?

強さの意味を、だ

 クウナの声は、どこか哀しげだった。

強さに理由を求める者ほど、脆い

……じゃあ、俺も脆い?

お前は違う。理由が“夢”だからな

 その言葉に、少しだけ照れた。

夢はくだらなくても、強さにはなる

クウナさん、それ褒めてる?

……たぶんな

 二人の会話が、朝の風に溶けていく。

 紅の風と、黒の影。

 それぞれが別の場所で、違う太陽を見ていた。

 まだ交わらない二つの道。

 だが、その行き先は——

 やがて同じ“夜”へと繋がっていく。

次回影のゆらめき

 

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