『 妖ノ祭 』 第8話 やさしさの境界線

AI が紡ぐオリジナルストーリー 『 妖ノ祭(あやかしのまつり) 』

8話 やさしさの境界線

 妖ノ祭、2日目の朝。

 深仙郷の北東、静かな湖畔。

 木々の間から差す光が、水面を優しく照らしていた。

 争いの足音が絶えない祭の中で、

 ここだけはまだ、静寂が残っていた。

 その湖畔で、

 ひとりの女性が祈るように手を合わせていた。

 ——水城ユナ

 深仙郷で最も優しいと呼ばれる人間。

 その隣で、布のような妖がのびをしている。

 ——カサナリ

 包み込み、守ることを本能とする妖怪。

〈ユナ・視点〉

 風が心地いい。

 こんな場所に居たら、祭のことなんて忘れそうになる。

ねぇカサナリ。もしさ、このまま誰とも戦わずに終われたら、それが一番いいんじゃないかな

いいねぇ〜、それ最高〜……

 カサナリがのびをして、私の肩に覆いかぶさる。

 柔らかくて、ちょっと重い。

……寝ないの

え〜、寝るのも戦略だよぉ。寝てたら襲われないし

いや、襲われるよ。

 思わず笑ってしまう。

 でも、この子の“のんびりさ”が救いでもある。

 湖畔の空気は穏やかだ。

 しかし、その静けさを破る影が一つあった。

 木の枝を踏む音。

 草をかき分ける足音。

 森の向こうから現れたのは、

 鎧のような皮膚を持つ妖と、その相棒の青年

 ユナたちが避け続けていた「戦い」が、

 ついに彼女たちにも訪れた。

〈ユナ・視点〉

戦闘はしたくありません。お願いです、そのままここを通ってください

 けれど、男は笑った。

 その妖——鋼鱗の鬼——が低く唸る。

祭だ、誰かが落ちなきゃ終わらねぇ

 次の瞬間、地面が割れた。

 鋼の爪が地を叩き、破片が飛び散る。

カサナリ!

うんっ

 カサナリの体が一気に広がった。

 布団のようにユナを包み込み、衝撃を吸収する。

 攻撃の音が、柔らかい何かに吸い込まれるように消えた。

〈カサナリ・視点〉

 ドン! ドガァ!

 ……音はすごいけど、まぁ大丈夫そう。

ねぇユナ、相手すっごい怒ってるよ〜

わかってる。でも、できれば攻撃はしたくない。私たちは守るだけ

了解〜〜。……でも、そろそろ布、焦げるかも〜

 敵の拳が布の外側を叩きつける。

 熱が伝わってくる。

 でも、不思議と怖くない。

 ユナの心が、落ち着いているから。

 その温度が、こっちまで伝わってくる。

 守るだけの戦い。

 だか、戦いを終わらせる為には守るだけという訳にはいかない。

 鋼鱗の鬼が拳を振り上げた瞬間、

 カサナリの布が一気に膨らんだ。

 “包み込む”。

 力ではなく、受け入れることで封じる。

 空気の震えが止まり、

 静寂が戻った。

 鋼鱗の鬼のタスキが、布の中から転がり落ちた。

〈ユナ・視点〉

 風が止まった。

 敵の姿は、カサナリの包みの中で眠っていた。

……手加減した?

うん。気絶だけ

ありがとう、やっぱりカサナリは頼りになるね

そうかな

 私は微笑んだ。

 戦わずに、守って勝つ。

 それが、私たちのやり方。

ねぇカサナリ。この祭、勝てなくてもいいの。ただ、“誰も傷つけずに終わる”を目指したい

うん、それってすごくユナっぽい〜。……でも、きっと難しいよ

わかってる

 湖面に映る自分の顔が、少し揺れた。

 湖畔の風がやんだ。

 カサナリの体が布のように畳まれ、

 ユナが静かにそれを撫でた。

次回怒りの輪郭

 

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