『 妖ノ祭 』 第5話 封印の祠

AI が紡ぐオリジナルストーリー 『 妖ノ祭(あやかしのまつり) 』 

5話 封印の祠

 妖ノ祭──二日目

 村の空は朝から薄曇り。

 朱の光が差すたびに、空気が軋んでいた。

 昨日、最下位と最強のペアが朱の森を揺らし、

 氷の少年が霧の森に異変を見つけた。

 そして今、二つの線が偶然交わる。

〈弦・視点〉

クウナさん、さっきから変な匂いがしない?

……焦げたような、鉄の匂いだ

だよね? この森、昨日と空気が違う

 深仙郷の霧の森。

 陽が昇っているのに、視界は悪い。

 枝葉の隙間から落ちる光が、まるで霞の層を突き抜けているみたいだ。

 ふと、足元がざわりと揺れた。

 地面が呼吸しているような、妙な感覚。

……また陣の痕跡か

どのペアがこんなもん使うんだろね

この陣はおそらく祭の規定外だ。誰かが“勝つ以外の目的”で動いてる

 クウナの声が、少しだけ鋭くなった。

 その時だった。

 霧の奥から、冷気が走る。

〈十和田ヒビキ・視点〉

 俺は氷の短剣を構えた。

 ここ数時間、霧の奥を警戒していた。

 昨日の吸力陣の波紋が、まだ地脈に残っている。

ヒビキ……また誰か来る

 ヒュグラの声。震えている。

わかってる。……黙って後ろに下がれ

 霧が割れた。

 現れたのは、赤いハチマキの男と、黒い衣の少女。

 最下位と最強の噂のペア。

 氷を礫にして飛ばすが、鵺の力で防がれる。

ちょっと、急に氷飛ばさないでよ!

祭の最中だ。何も問題ないだろ

 視線が交錯する。

 弦の眼はまっすぐで、妙に熱い。

 こういうタイプは、放っておくと厄介だ。

 ヒビキの短剣が風を裂く。

 氷の軌跡が螺旋を描き、弦に迫る。

っ、速い!

 弦が反射的に身をかわす。

 クウナが一歩前へ出て、風のような衝撃を放つ。

 衝突。

 冷気と風圧がぶつかり合い、木々が弾ける。

 霧が裂け、光が乱舞した。

 まるで空気ごと戦っているような感覚。

 だがその中で、ヒュグラが小さく叫んだ。

ヒビキっ、だめ、俺……邪魔になる!

黙れ! 動くな!

 だがその一瞬、ヒビキの集中が途切れた。

 クウナの風刃が頬をかすめ、氷の刃が砕ける。

〈クウナ・視点〉

 相手の技量は確か。

 だが妖力の制御が甘い。守りに引きずられている。

 ——守っている?

 背後の、薄い気配の妖。

 クウナの目に、霧の中で揺れる影が映る。

 ヒビキが距離を取り、片膝をついた。

 彼の目は、焦りに染まっていた。

……引くぞ、ヒュグラ

えっ、でも——

この状況で守りながら戦えば、どちらにせよ負ける

 ヒビキは霧に氷の壁を作り、すぐに後退する。

 その判断に、クウナは微かに目を細めた。

撤退判断、早いな

生き残るのが大事だ

 ヒビキの唇がわずかに歪んだ。

 戦いが終わると、霧はゆっくりと閉じた。

 氷の道が消え、音が吸い込まれる。

 残ったのは、霧と風。

 弦とクウナは互いに息を整えながら、

 割れた地面の下に奇妙な紋様を見つけた。

 ——祠の封印。

 だが、それが何を意味するのかを

 まだ誰も知らなかった。

 森を離れたあと、ヒビキたちは廃屋の軒下で休んでいた。

 ヒュグラは黙ったまま、壁にもたれている。

……さっきはごめん。俺のせいで——

言い訳するな

 ヒビキの声は冷たかった。

 だが、その後に小さく続いた。

……次は、邪魔になる前に動け

 ヒュグラが顔を上げた。

 その表情に、少しだけ光が差した。

 霧の森。

 その奥に隠された封印は、まだ静かに眠っている。

次回群青の剣士

 

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