『 妖ノ祭 』 第3話 鐘の音は、戦を止める

AI が紡ぐオリジナルストーリー 『 妖ノ祭(あやかしのまつり) 』 

3話 鐘の音は、戦を止める

〈弦・視点〉

 朝の空気が張りつめていた。

 風が冷たい。けれど、胸の奥は妙に熱い。

 祭が始まってまだ三時間。

 すでに村のあちこちで戦闘が起きているという。

 俺たちは、北の林道を進んでいた。

索敵範囲、広すぎない?

妖気の波を読むには、風を使うのが一番だ

 クウナは淡々と答え、空を仰ぐ。

 目が細くなる。

 次の瞬間、彼女の声が低く響いた。

来る

 森の奥。枝が折れる音。

 そこから、三組の人間と妖怪が現れた。

 ——小規模の混成チーム。下位ペア同士が“手を組む”戦術だ。

最下位と最強だって? 話題のペアだな

 リーダー格の男がにやりと笑う。

 手には鉄扇、目は獲物を値踏みする獣のよう。

 妖怪の方は爪が黒く光り、地面に影を落とす。

賞金首みたいな扱いだな

 俺がつぶやくと、クウナは口角をわずかに上げた。

悪くない。初戦には丁度いい

 最初に動いたのは弦だった。

 相手の人間は俊敏。妖怪が影を延ばして囲い込もうとする。

 弦はその瞬間、地面の落ち葉を蹴り上げた。

 砂煙のように葉が舞い、影が一瞬だけ消える。

 その間に体をずらして回り込み、クウナが構える。

下がれ

 冷たい声。

 彼女の指先が動いた瞬間、周囲の空気が音を立てて弾けた。

 次の刹那——

 地面が陥没し、三組の敵が一瞬で吹き飛ぶ。

 衝撃波に近い。妖力の圧で空間が歪んでいる。

なっ……なんだこれ……!

 敵の妖怪が悲鳴を上げた。影がほどけ、煙と共に消える。

 人間側もタスキを守る余裕もなく、よろめいたまま膝をついた。

戦意喪失。……この程度か

 クウナは息ひとつ乱れていないまま、倒れている3組からタスキを奪う。

 弦の元に戻ってきた彼女に弦は言った。

強すぎて参考にならないね

お前が悪手を打たなかったおかげで、見せ場を作れた

お?褒めた?

……評価だ

 短い言葉の中に、かすかな信頼が混ざっていた。

 その一戦の様子を、遠くの高台から見ていた者がいる。

 黒い衣をまとい、静かに笑む男——御神楓

 隣には、白い装束の女・ヒメガミが佇む。

想定より早い成長だ

人間の意志は、妖力よりも読みにくいものだからね

だからこそ利用できる

 楓の掌には、黒い光を帯びた符が浮かんでいた。

 それは村の各地に設置された、封印式の一部。

 ——妖ノ祭全体を“ある目的”に利用するための装置だ。

まだ慌てるな

 ヒメガミがささやく。

夜が来る。そこからが本番だ

〈弦・視点〉

 戦いを終えて、弦たちは森を抜けた。

 西の空が朱に染まり始めている。

 村の屋根の向こうで、太鼓が鳴った。

今日はもう十分だね

油断するな。夜の鐘までは戦場だ

 クウナは歩みを緩めず、前を見据える。

 その横顔を見ながら、弦はぽつりと言った。

ねぇ、クウナさん。最強って、どうやってなれるんだ?

退かないこと。怯まないこと。そして——退屈しないこと。

最後の要素、重要なの?

重要だ。退屈は、何よりも罪深い

 彼女の言葉に反応しようとしたその時、

 空気がふっと重くなった。

 前方の竹林がざわめき、炎が立ち上がる。

 現れたのは、——御神楓。

 その隣に、静かに笑うヒメガミ。

思いの外、いいコンビだな

いきなりで悪いが、ここで一度“力量”を測らせてもらう

 楓の妖力が、空気を震わせる。

 地面が溶け、炎が生き物のように伸びてきた。

 クウナが構え、弦はすかさず距離を取る。

 ——熱が来る。

 だがその熱の中、クウナの声だけが静かだった。

弦、目を閉じろ

 瞬間、轟音。

 視界の中で、朱色の光が爆ぜ、炎が消える。

 クウナの妖力が炎を“喰った”のだ。

 その一手に楓が舌を打つ。

面白い。やはり“最強”は本物だ

 だが次の瞬間——

 ゴォォォン……

 低く、長い鐘の音が空を裂いた。

 全ての妖力が、風に吸い込まれるように消えていく。

 戦闘時間終了。21:00。

〈クウナ・視点〉

 楓は炎の中に立ちながら、余裕の笑みを浮かべた。

鐘に救われたな

どちらが?

……次は問答じゃなく、“結果”で答えよう

 ヒメガミが軽く会釈し、二人は炎の中に溶けていった。

 残された空間に、夜風が吹く。

 私は息を整え、振り返る。

 弦は、ほんの少しだけ目を細めていた。

……あの人、何かを仕掛けてる

そうだ。けれど、焦るな。お前の夢は、まだ壊されていない

壊させるつもりもないし、壊すの結構難しいタイプの夢だと思うよ?

 彼がそう言ったとき、朱の光が月の下で揺れた。

 頭のハチマキが風に舞う。

 その赤が、夜の中で一瞬だけ炎のように見えた。

〈トコヨ・視点〉

 塔の上から見下ろす夜の村は、まるで光る盤面だった。

 あちこちで燻る妖気。けれど、すべては鐘一つで静まる。

 巻物を広げ、筆を走らせながら呟く。

初日終了。失格16組、重傷者ゼロ。

 注目は“最強と最下位”、初戦・圧勝。

 夜戦、楓と交戦——鐘の音にて終息。

いやぁ、盛り上がってきたねぇ

 団子をひとつ口に放り込みながら、トコヨは笑う。

次回影を連れる者

 

前回『 妖ノ祭 』 第2話 最強と最下位

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