『 妖ノ祭 』 第2話 最強と最下位

AI が紡ぐオリジナルストーリー 『 妖ノ祭(あやかしのまつり) 』 

2話 最強と最下位

〈弦・視点〉

朝が、赤く滲んでいた。

朱の光を溶かしたような空の下、ハチマキをきゅっと結び直す。

祭りの二日目——いや、実質的な妖ノ祭の初日だ。

戦闘は朝九時から、夜九時まで。

そんなルールがあるから、村中の空気は妙に静かだ。

嵐の前の静けさってやつだろう。

昨夜、抽選で組まされたのは、妖怪ランキング1位の鵺・クウナ

最強と最下位。どっから見ても組み合わせのバグだ。せめて怒らせない様に、さん付けで呼ぶようにしないと。

彼女は今、少し離れた川沿いに立っていた。

風も受けずに、まるで風そのものみたいに。

ねえ、クウナさん

声をかけても、返事がない。

代わりに、川面に反射した光が彼女の金の瞳を照らした。

クウナさん、どこ見てるの?

流れ。

……川の?

違う。“戦場の”流れ。

 その言葉に、思わず口を閉じた。

 たしかに、風が少しざわついている気がする。

 遠くの方で、早くもペアが動き出しているらしい。

 開始まであとわずか。

ん?

戦う気はあるか?

あるよ。もちろん

ならいい。逃げる奴とは歩けない

 まるで読まれていたみたいで、苦笑いがこぼれる。

逃げないよ。……勝ち方を探してるだけだ

ほう

勝てないって決めつけるのは、もったいないでしょ?

 その一言で、クウナさんの口元がほんの少しだけ動いた。

 たぶん、笑ったんだと思う。

 雷のように一瞬で消える笑み。

〈クウナ・視点〉

 人間という種は、脆いくせに愚かで、面白い。

 この村では妖怪と同じように生きているが、その“根”はまるで違う。

 欲がある。けれど、引かない。

 中谷弦はその典型だ。

 ——逃げない。

 けれど、無謀でもない。

 恐怖を“見て”から動く。

 面白い。

 久しく、こんな奴と組んだ覚えはない。

 私は川の上を渡る風を読んでいた。

 どこからどんな妖力の流れが生まれているか。

 村の外れでは、すでに試し合いが始まっている。

 “音”が違う。

 欲望が鳴っている。

弦、行くぞ

どこに?

高台。見晴らしのいい場所だ

索敵ってことか

良く分かってるな

 少年の目が、少しだけ鋭くなる。

 昨夜までの迷いはない。

 彼はもう、“観客”ではない。

 ——戦場に立つ者の目をしていた。

 妖ノ祭、開幕一日目

 深仙郷は、まるで生き物のようにうごめいていた。

 各所で人と妖が動き出す。

水城ユナ・視点〉

 村の西側、湖のほとり。

 私はお茶を沸かしていた。

 カサナリが横で丸くなり、布団みたいに私の足を包む。

ユナ〜、今日の戦い、出なくていいの?

うん。戦う気はないんだもん

弦くんとクウナさん、どうしてるかな?

たぶん、もう走ってるよ

 湯の音が、やわらかく風に流れる。

 この祭が血ではなく“夢”を懸けたものだとしても、誰かが泣くのは変わらない。

 私は祈る。

 せめて今日、誰も悲しみで壊れませんように——。

〈弦・視点〉

 高台から見下ろす村は、まるで盤面のようだった。

 家々の屋根の間を、人影と妖気が点滅している。

 クウナが言う。

全体を見ろ。お前の“頭のハチマキ”は狙われる。ちゃんと考えて行動出来るようにしておけ

囮は任せてよ。最下位でも、出来ることはあるから

 彼女の目が横で光る。

 「言葉だけじゃなく、行動で見せてみろ

 その言葉に、俺は頷いた。

 祭りの始まりを告げる太鼓が、村の中央から鳴る。

 朝九時。妖ノ祭、正式開幕。

 風が、弾けた。

 クウナさんの黒髪が舞う。俺のハチマキがなびく。

なに?

最下位でも、悪くない心構えだな

最強に言われると、悪い気はしないな

 二人の影が、朱の光の中で重なった。

 その光景を、誰もまだ知らない。

 この瞬間こそが、後に“妖ノ祭”と”深仙郷“を救う一歩だった。

 風が鳴る。

 太鼓の音が響く。

 深仙郷が息を吸い込み、放つ。

 最下位と最強

 一見相反する二人が、今、同じ方向を見ている。

次回鐘の音は、戦を止める

 

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