『 妖ノ祭 』 第39話 ときめきの残光

AI が紡ぐオリジナルストーリー『妖ノ祭(あやかしのまつり)』

39話 ときめきの残光

 レイジの炎が消え、静けさが戻った。

 深仙郷の空は、午後の陽を失い、ゆっくりと紅に沈み始めている。

 中谷弦クウナ

 疲弊した身体に、まだ戦いの熱が残っていた。

 ——だが、その安堵を奪うように。

 風が甘く香る。

 桜色の霧が流れ込み、視界が歪んだ。

〈弦・視点〉

……なに、これ

 鼻腔をくすぐる、花のような香り。

 空が滲み、クウナの声が遠くに聞こえた。

気を抜くな、弦ッ!

 次の瞬間——。

 ピンク色の閃光と共に、少女の声が降ってきた。

『恋のときめき、不意打ちアタック♡』

 光弾が炸裂。

 爆風と共に、無数のハート形の光が弾けた。

 爆風の中心から、星乃ココロが現れる。

 ピンク色のドレスのような戦装束、

 その背で、ドキンバチが透けた羽を震わせていた。

やっほー!不意打ち大成功!

ずるくない?」弦が苦笑する。

ずるいのは恋の常套手段♡

 ウィンク一つで、世界が柔らかく歪む。

 クウナがすぐに警戒する。

……幻覚の妖力。目を閉じても、脳に直接影響するタイプか

 弦の視界が、別の世界へと切り替わった。

 ——暖簾のかかるラーメン屋。

 ——湯気。笑顔。あの日の夢。

お帰りなさいませ〜!弦くん、夢が叶ったね!

 見たことのない店員たちが笑顔で迎える。

 弦は拳を握った。

……やめてよ。こういうのは……好きじゃない

 声に、少し寂しさが滲む。

〈クウナ・視点〉

 クウナは幻覚の中でも意識を保っていた。

 目を細め、妖力を流す。

現実との接続が脆いな……叩き割る!

 黒い妖力の刃を放つ。

 幻覚の世界が亀裂を走り、ココロの表情が一瞬苦しげに揺らいだ。

さすが最強の鵺……幻を破るなんて

“夢”と“幻”の違いも分からんのか

 クウナの声は冷たい。

〈ドキンバチ・視点〉

ココロ!やばいよ、ばれた!

わかってるっ!なら次は——“ドッキドキ・ラブボム♡”!

 ドキンバチが空に飛び上がり、

 全身をピンク色の光で包む。

 心臓の鼓動のようなリズムが響き、妖力が圧縮されていく。

 ——爆発前の静寂。

弦、下がれ!

いや、行く!

 弦が一歩踏み込む。

 風が止まり、時が止まる。

 拳と爆発の中心が、同時にぶつかった。

 光。

 音。

 爆発。

 空が一瞬、真昼のように白く輝いた。

 爆炎の中から弦が飛び出す。

 その拳には、赤いハチマキの光が宿っていた。

恋も爆発も、タイミングが大事なんだよ!!

ええぇ!?なにそれ名言っぽいけど違うぅ!!

 ココロが焦る間に、弦が距離を詰める。

〈ココロ・視点〉

どうして……!

 ココロの幻覚も、爆発も、全部突破された。

 でも、彼の顔は優しいままだった。

“恋”ってすごいよね。でも、恋って——“一人で頑張るもん”じゃないと思うんだ

 その言葉に、ココロの手が震える。

……誰かと一緒に、叶えるもんってこと?

そう。俺も、クウナさんも、皆の“夢”でここまで来た

 風が吹く。

 ココロは目を閉じ、笑った。

残念、あなたの“夢”には勝てないね

 彼女の後ろにいたドキンバチのタスキが空に舞い。風に溶けて消えた。

 同時に、ドキンバチの羽がふわりと落ちる。

ココロ、泣いてるの?

ううん……最後まで楽しかっただけ

 空が、淡い桃色に染まる。

〈クウナ・視点〉

 夕陽が完全に沈み、夜が近づく。

 クウナが小さく笑った。

弦、お前……立派になったな

え、マジ?やった!

だが、ラーメン屋の看板名を“夢恋軒”とかにするのはやめろよ

すごい!今候補で考えてたとこ!

……本当にやめろ

 ふたりの笑い声が、深仙郷に響いた。

 こうして、妖ノ祭は終わりを告げた。

 光も影も、恋も夢も、すべてが交わり、ひとつの風となる。

 夜空には、敗れた者たちの“夢の残光”が漂い、

 深仙郷を柔らかく照らしていた。

夢は、ひとりで掴むものじゃない。誰かと交わることで、初めて“現実”になる。

次回最終回深仙郷、夜明け前

 

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