『 妖ノ祭 』 第35話 夢の心臓

AI が紡ぐオリジナルストーリー『妖ノ祭(あやかしのまつり)』

35話 夢の心臓

 朝が、来た。

 深仙郷の空が、ようやく静寂を取り戻していた。

 昨夜の異常な光の奔流も、世界を包んだ夢の残滓も、

 いまは薄い霧と朝露に溶けていく。

 ——妖ノ祭、八日目の朝。

 長く続いた誰も知らない戦いが、ひとつの終わりを迎えていた。

〈弦・視点〉

……やっと、夜が明けたね

 弦は倒れかけた鳥居の下に腰を下ろし、

 ぼんやりと空を見上げた。

 空気が冷たく、澄んでいる。

 朝の光が頬を撫でるたび、

 “生きてる”って感覚が、少しずつ戻ってくる。

 すぐ横には、腕を組んで立つクウナの姿。

 昨夜の戦闘の疲労を微塵も見せない。

寝ないで大丈夫なの?

妖は寝なくても死なないからな

 クウナは淡々と答えたが、

 彼女の羽根はかすかに揺れ、疲労の色を滲ませていた。

〈クウナ・視点〉

……楓の術式、完全に消えたな

 霧の向こうで、祠の跡地が静かに崩れていく。

 あの白い光は、もうどこにもない。

楓さん、最後に笑ってた」弦が呟く。

戦う前より、ずっと優しい顔だった

……そうだな

 クウナは空を見上げた。

 薄い雲の隙間から覗く青空が、妙に眩しかった。

人間って、不思議だな。壊しながらも、ちゃんと“守ろうとする”。その矛盾が、あの男を苦しめたのかもしれない

 風が、ひとひらの花弁を運ぶ。

 それはまるで、消えた楓の残光のようだった。

 朝陽に照らされる村の奥。

 倒壊した屋根の上で、トコヨが尻尾を丸めてあくびをしている。

ふわぁ〜……長い夜だったなー。まさか、妖ノ祭で“世界再構築”が起こるとはねぇ

 小さな狸妖怪は、ぼやきながら村の様子を見回した。

 誰もが疲れ果てて眠り、

 けれど確かに、生きていた。

中谷弦ペアと御神楓ペアの戦い。

時刻は21:00過ぎていたが……まぁルール違反を正す為の行いだったという事で不問かな!

トコヨは祭の記録用巻物に筆を走らせる。

——七日日、失格者三。残りペア数は八。 御神楓・ヒメガミペアの大規模術式により、一部を除く深仙郷住民が夢の世界に囚われ睡眠状態に。

御神楓・ヒメガミペアの非参加者への危害を確認。排除の為我、中谷弦・クウナペアへ協力。上記ペアの活躍により大規模術式の解除、御神楓・ヒメガミペアの排除に成功

〈ヒメガミ・視点〉

 祠の瓦礫の中。

 ヒメガミは、膝をついたまま空を見上げていた。

 隣に居たはずの楓は温もりだけを残してどこかに消えていた。

……楓、あなたの“理想”は消えた。でも——あなたの“願い”は、生きているみたい

 ヒメガミは立ち上がる。

 衣の裾を払うように風が吹く。

私の役目は、もう一度見届けること。この村が、再び夢を見る瞬間を

 彼女は振り返らず、静かに去っていった。

〈弦・視点〉

クウナさん

何だ?

……俺、ちょっと夢を見たんだ

夢?

あぁ。楓さんの声が聞こえた

夢は、奪い合うものじゃない。願いがぶつかる場所こそ、ほんとうの“祭”なの。

 弦はハチマキに触れた。

 赤い布地が、ほんの少しだけ温かい気がした。

もしかしたら……この妖ノ祭を作った本当の意味って、“戦う”ことじゃなくて、“願いを見せ合う”ことだったのかも

 クウナが微笑む。

ようやく気づいたの?

はは、普通気づけないって

 太陽が、深仙郷の山の向こうから顔を出す。

 光が霧を払い、

 倒壊した街並みに新しい影を作る。

 ——祭はまだ、終わっていない。

 残りの参加者たちは、まだ生きている。

 そして、“願い”もまた、生きている。

〈クウナ・視点〉

 祠をあとにして歩く途中、

 クウナがふと立ち止まった。

……ねぇ、弦

ん?

お前の“夢”って、なんだったっけ?

世界一美味いラーメンを食べること

ふふ、それ、まだ叶ってないな

そうだね

 弦は笑った。

でも、食べる時は絶対クウナさんも一緒だよ

 クウナが、ほんの一瞬だけ目を見開いた。

 そして、くすっと笑った。

……光栄じゃないか

 朝の風が、二人の間を通り抜ける。

 鳥の声が響き、山の向こうに陽光が差し込む。

 深仙郷の地に、

 “静かな希望”が芽吹き始めていた。

夢は終わらない。誰かが信じる限り、また新しい朝が来る。

次回再起ノ刻

 

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