『 妖ノ祭 』 第17話 静寂の兆し

AI が紡ぐオリジナルストーリー 『 妖ノ祭(あやかしのまつり) 』

17話 静寂の兆し

 妖ノ祭、五日目の昼。

 空は薄曇り。

 深仙郷の森を包む空気は、どこか重く、音が遠い。

 ——まるで、森全体が眠っているかのようだった。

 鳥の声も、虫の音もない。

 代わりに、微かに響く“鼓動”のような音があった。

 瑞樹トウヤは、立ち止まって空を仰いだ。

……聞こえるかい、ヤマワラワ?

……この森が泣いている。根がざわついている

やっぱり、気のせいじゃなかったんだ

〈トウヤ・視点〉

 空気が濁っている。

 妖力の流れが滞り、森の呼吸が乱れている。

 その中心から、黒い波のようなものが広がっていた。

……あれが、源か

 木々の奥に、黒い布のような影が見える。

 人間の姿。

 ゆっくりと、こちらへ歩いてくる。

 目が合った瞬間、空気が変わった。

 空気が凍るほどの“静けさ”——。

 御神楓だった。

〈楓・視点〉

 穏やかな笑みを浮かべながら、彼は立ち止まる。

 背後には、ヒメガミが佇んでいる。

瑞樹トウヤ……君の詩は、村の者に人気があるよね

ありがたいことだよ。でも、今日は読者の顔色が悪いみたいだ

森のこと?

そう。“誰か”が、風の流れを止めている

 楓の唇が、薄く笑みを描いた。

……正解。でも、止まっているのは森だけじゃない。村も、人も、妖も。この祭が終わる頃には、すべて静かに整う

 その言葉に、トウヤの瞳がわずかに揺れた。

……整う、とは違うだろう。あなたが求めているのは“支配”だ

支配ではないよ、“秩序”だ

 楓の声が低く響く。

 空気が歪む。

〈ヤマワラワ・視点〉

トウヤ、離れろ

……遅い

 次の瞬間、空気が爆ぜた。

 地面から黒い光が走る。

 森の根が、悲鳴を上げて裂ける。

 ヒメガミの目が淡く光り、空間が波打つ。

地の力では、空を縛れぬ

縛るつもりなんてないさ。僕は、ただ“響かせたい”だけだ

 トウヤの体が淡く光る。

 口から詩が零れる。

風よ、森よ、芽吹きの声を忘れるな——

 その言葉に呼応するように、

 ヤマワラワの体が巨大な樹へと変化した。

 枝が広がり、森の上空を覆う。

 トウヤの力——“共鳴”。

 言葉の波動で自然の力を増幅し、森全体を共振させる。

 枝葉が光を反射し、黒い妖力を押し返す。

 一瞬だけ、空が開けた。

 ——だが、ヒメガミはまるで退屈そうだった。

〈楓・視点〉

美しい詩だ。けれど、音が多すぎる

 指先がわずかに動いた。

 地面に描かれた術式が淡く輝く。

 空気が、一瞬で“静寂”に変わった。

 風が止む。

 木々のざわめきも、鳥の声も消える。

 まるで世界そのものが、息を止めたようだった。

秩序とは、余白を作ること。音が多すぎると、美しさが死ぬんだよ

〈トウヤ・視点〉

 身体が重い。

 音を奪われるとは、これほどまでに苦しいのか。

……これは……共鳴の封殺……?

君の詩は美しい。けれど、それは“自由”の詩。私はそれを、不要だと思うんだ

 楓の瞳は、慈悲のようでいて、残酷だった。

 ——完全な静寂。

 心臓の鼓動すら、音を失う。

 トウヤの唇が動く。

 声が出ない。

 けれど——

 隣で、ヤマワラワがわずかに動いた。

……まだ……風は……死んでいない……!

 ヤマワラワの巨体が光を放つ。

 最後の力を振り絞り、トウヤを包み込むように枝を広げた。

 その瞬間、ヒメガミの手が動いた。

 赤い光が走り、トウヤのタスキが切れる。

 ヤマワラワの光が消え、巨体が崩れ落ちた。

〈ヒメガミ・視点〉

静かで、美しい

そう思うかい?

ええ。あなたの“秩序”には死の匂いがする

 ヒメガミは微笑んだ。

 それは、皮肉でも否定でもなく、

 ただ“本質を見た者の言葉”だった。

 黒い霧が森を覆う。

 光が消え、風が止む。

 その中心で、

 瑞樹トウヤとヤマワラワのタスキが、静かに地に落ちた。

 楓はそれを拾い上げ、微笑んだ。

音のない世界。それこそが、私の理想の“調和”だ

次回燃えぬ炎

 

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