『 妖ノ祭 』 第23話 赤の覚醒

AI が紡ぐオリジナルストーリー『妖ノ祭(あやかしのまつり)』

23話 赤の覚醒

 妖ノ祭、六日目の夕刻。

 森を覆う霧の中、風が止まった。

 赤い夕陽が、木漏れ日となって差し込む。

 その光の中で、二人の男が向かい合っていた。

 片桐シュウゾウ——伝説の剣士

 中谷弦——無能力者の少年

 そして、その背後にはそれぞれの妖がいる。

 ヤトノカミは巻物の姿で沈黙を守り、

 クウナは臨戦態勢に入ったまま、睨みつけていた。

 今、深仙郷の空気がゆっくりと震えていた。

〈弦・視点〉

……本気でやるつもりですか?

うむ。遠慮はせん。だが、殺す気もない

 老人の言葉は淡々としていた。

 その無慈悲さの中に、“信頼”が滲んでいるように聞こえた。

じゃあ、俺も——負ける気はないですよ!

 弦は頭に巻いた赤いハチマキを締め直す。

 布が風を受けてはためいた瞬間、

 空気が一変した。

 シュウゾウが一歩、踏み出す。

 それだけで、弦の足元の土が鳴った。

 刀を抜く動作に無駄がない。

 音すらなく、刃が空を裂く。

 弦は紙一重で身を反らす。

 髪の先を切り裂かれるほどの斬撃。

……速いっ!

それでも避けたか。いい反応だ

 次の瞬間、二撃目が来る。

 上下、左右、角度が読めない。

 まるで剣そのものが意思を持って踊っているようだった。

〈クウナ・視点〉

……人間の域を超えてる

 クウナの瞳が揺れる。

 しかし彼女の興味は、シュウゾウではなく弦に向かっていた。

避けている……いや、読んでいる?

 弦の足の運び、体重移動、目線の動き。

 すべてが、わずかに“変わっていた”。

この空間の“流れ”を感じている

 クウナが微かに笑う。

なるほど……そう、それでいい

〈弦・視点〉

 息が苦しい。

 でも——身体が軽い。

 風が読める。

 音が遅く聞こえる。

 筋肉の動きが自分の意志より先に動く感覚。

これ……何だ?

 頭に巻いたタスキが熱を帯びていた。

 額の奥から、赤い光が広がる。

中谷弦、そのハチマキ——

 シュウゾウの声が低く響く。

それが、お前の“力”か

 赤い布が輝き、弦の身体を包む。

 妖気のような、しかし人の心の“熱”に近い波動。

 空気が震えた。

——タスキが……反応してる?

 クウナの目が見開かれる。

 赤の光が、弦の周囲に軌跡を描く。

 踏み込むたび、足跡が赤く光り、

 剣を受けるたび、衝撃波が弾けた。

 シュウゾウの瞳がわずかに笑った。

そうだ、それこそが祭の醍醐味だ!!

〈シュウゾウ・視点〉

この者……“無能力者”じゃない

 いや、違う。

先程までは無能力者だったんだ。

この者は——祭に選ばれたのだ。

 これは——タスキによる覚醒の力。

 命を燃やす気配がある。

 理屈じゃない、ただまっすぐに生きる者の“気”。

いいぞ、もっと出せ妖力だけじゃない……“人の熱”を見せてみろ!

〈弦・視点〉

 気づけば叫んでいた。

うおおおおおおおっ!!!

 拳が光を帯びる。

 刃と拳がぶつかり合い、

 周囲の霧が吹き飛ぶ。

 衝撃で木々が揺れ、土が舞う。

 シュウゾウの剣が押し戻される。

 その瞳が、驚きと歓喜で光る。

そうだ……それだ!それこそ、妖力だけじゃない、人と妖の力だぁ!!!

〈ヤトノカミ・視点〉

……ああ、やはりこの少年だ。赤きタスキは、“祭りの鍵”

 巻物の中で、古き蛇が静かに目を開けた。

 その瞳に、赤い光が反射する。

深仙郷の妖ノ祭……赤いタスキ。その2つの意味をこの少年は証明している

 衝撃の中で、剣と拳が交差したまま止まる。

 風が止まり、時間が凍ったような一瞬。

 弦のタスキが光を放ち、

 シュウゾウの刀が鳴いた。

 沈黙の中で、老剣士が笑う。

……見事だ。まだ粗いが——“炎”がある

 弦は膝をつき、息を切らした。

はぁ……はぁ……

この瞬間を忘れるな。お前が今、無力を越えた瞬間だ

〈クウナ・視点〉

 クウナはゆっくりと目を細めた。

 弦の肩に手を置く。

……覚醒、おめでとう

そんな大げさなもんじゃ……

いいや。弦の中の“妖力”が、ようやく目を覚ました

 彼女の声は柔らかく、

 ほんの少し、誇らしげだった。

 赤い夕陽が、木々の隙間から差し込む。

 風が、ようやく森を渡り始めた。

 その風の中で、

 老剣士と若き元無能力者が、互いに笑い合う。

力とは、授かるものではない。“歩き続ける心”の中に宿るものだ。

 妖ノ祭・六日目。

 赤の光が初めて、深仙郷を照らした。

次回黒炎の宴

 

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