『 妖ノ祭 』 第4話 影を連れる者

AI が紡ぐオリジナルストーリー 『 妖ノ祭(あやかしのまつり) 』 

4話 影を連れる者

 深仙郷、妖ノ祭・初日。

 朱の光が村を包み、人と妖が夢を懸けて動き出す。

 だがその喧噪の届かぬ場所があった。

 北東の霧の森。

 風が通らず、音が吸い込まれる、息を潜めた世界。

 そこを歩く二つの影。

 一人は氷のように冷静な少年、十和田ヒビキ

 もう一人は、霞のように輪郭の薄い妖、ヒュグラ

 最も静かなペアの、最も冷たい一日が始まる。

〈十和田ヒビキ・視点〉

 靄の中を進む。

 視界は二歩先まで。

 音もなく、ただ風の震えだけが耳に残る。

 妖ノ祭が始まって数時間。

 西では火柱が上がり、南では雷が落ちているのが見えた。

 だが、そんなことは関係ない。

騒がしい場所ほど、無駄が多い

 効率の悪い戦闘を避け、俺は霧の森を選んだ。

 視界が悪く、音が響きにくい。

 ——最小の労力で、生き残れる場所だ

 背後で、かすかな声がした。

ヒビキ……まだ歩くの?

黙れ。声を立てるな

……ごめん

 声の主、ヒュグラ。

 妖怪ランキング最下位

 索敵も攻撃もできず、存在そのものが薄い。

 なぜペアに選ばれたのか、今でも理解できない。

 ランダムとはいえ、神の悪戯にもほどがある。

 俺の目に見えるのは、ただの影のノイズ

 この霧と何が違う。

〈ヒュグラ・視点〉

 ヒビキの背中は遠い。

 距離は数歩しかないのに、

 見ているのに、届かない。

 「声を立てるな」と言われたけど、

 声を出さなきゃ、自分が居ることさえ分からなくなる。

 風に溶けるような身体。

 妖力は弱く、爪も牙もない。

 ランキング最下位。笑われることすら、されない存在。

 けど——。

 それでも、ヒビキの隣に立っていたい。

 彼の眼差しの先に、“役に立つ影”として映りたい。

 それだけが、今の僕の夢だ。

〈十和田ヒビキ・視点〉

 霧の中で足を止めた。

 空気の流れが変わる。

 妖力の波が、森の奥で渦を巻いている。

……何だ?

 耳を澄ませる。

 ただの霧じゃない。

 この空間そのものが、ゆっくりと“吸い込まれている”。

地脈が歪んでる。妖力が下へ流れてるな

 俺はしゃがみ、手を地面につけた。

 薄く刻まれた符が指先に触れる。

 封印でも結界でもない。

……吸力陣か

 地の妖力を、一方向へ導く術式。

 誰が仕掛けた? 村の結界をいじれるのは限られた人間だけだ。

 思い浮かぶ名前は——御神楓。

ヒュグラ

なに?

動くな。陣の上だ

えっ、やばいの?

お前が“薄い”おかげで発動しなかった。普通の妖なら、もう妖力を吸い込まれてる

……役に、立った?

役に立つとかではない

 その言葉に、ヒュグラは小さく俯いた。

 声を殺して笑うような、泣くような音が霧に溶けた。

 同じ刻、村の南では朱の森が燃えていた。

 最下位と最強のペアが、御神楓と相対している。

 鐘が鳴る少し前。

 異なる場所で、異なる真実が生まれていた。

 ヒビキは、冷静に陣を観察していた。

 ヒュグラは、ただ黙って隣に立っていた。

 その距離は、言葉より遠い。

〈十和田ヒビキ・視点〉

 朱の鐘が鳴る。

 戦闘終了の合図。

 霧の森にも、その音が届いた。

 俺は短剣を鞘に戻し、焚き火を起こす。

 火の粉が白い霧に散る。

ヒュグラ

……うん

お前、今後は極力黙ってろ。下手に喋ると、敵に位置を悟られる

……はい

 返事の声が、霧の中に溶けた。

 その“はい”の中に、微かな寂しさがあった。

 気づいてはいた。

 でも、口にする必要はない。

 妖ノ祭は、感情よりも結果がすべてだ。

 朱の光が沈み、白い霧だけが残った。

 その夜、二人は言葉を交わさずに眠った。

 氷のように冷たい沈黙。

 それが、このペアの“絆”の始まりだった。

次回『封印の祠

 

前回『 妖ノ祭 』 第3話 鐘の音は、戦を止める

『 妖ノ祭 』はじまりの第1話 封じられた夜、朱の光

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